4回 立教教育研究国際セミナー 

*おかげさまで無事終えることができました。協力していただいた皆さん、参加していただいた皆さん、どうもありがとうございました。
 *当日報告されたスライドをこのページにアップしました。


フィンランドより二人の発達心理学者を迎えて子どもの発達に対する遊びの意義を考える公開シンポジウムを開催します。どなたでも参加できます。奮ってご参加下さい。参加費無料です。

公開シンポジウム「子どもの発達と遊び:フィンランドのまなざし」  
The Finnish perspective on the role of play for children's development


日時:2010年3月6日(土) 13:30~17:30 
場所:立教大学(池袋) D501教室(14号館)

    上記該当箇所をクリックすると案内が出ます。

●講演者 Pentti Hakkarainen, フィンランド,オウル大学カヤーニ校 
テーマ:ナラティブ・ラーニング

報告スライド(←クリックすると閲覧可能)

講演要旨: 

 われわれはあるシンプルな問いからナラティブ・ラーニングの研究を始めた:遊びはいつでも子どもに意味を形成し、子どもは喜んで遊び活動に打ち込む。なのに、なぜ学校ではその状況が根本的に変わってしまい、教師は子どもに学習を強いなければならなくなるのだろうか? 遊びに含まれる学習と学校で行われる学習にはどのような違いがあるのだろうか? 学校的学習を遊びと同じように、意味を作り出すものへと変えることはできないのだろうか?これらの問いは次のように言い換えることができる。つまり、子どもの活動を変えることで、学習動機、好奇心、自発性を発達させるにはどうしたらよいのか?
 遊びや想像的状況では、ある逆説的な現象が観察される。子どもたちは自分が引き受けた役割に助けられて、自らの衝動を抑え始める。その役割はその子どもに何をどのようにするのか指示する。しかし、ある役割を演じることは強い動機を与えるものである。役割遊びの中でなされる学習は、役割間の相互交替と、あるテーマやアイデアを拡張するための探索的やりとりに基づいている。学校学習に導かれた大人はしばしば子どもが持つ自由な創造性を欠き、あらかじめ定められた目標や結果を達成しようとする。探索したいという子ども自身の欲望やアイデアにあふれた試みは制限されてしまう。フィンランドの学校システムでは、ほとんどの課題や宿題には唯一の正しい答えが用意されてしまっている。
 想像的なプレイワールドをつくりだすことによって、大人は子どもの役割行動や自己制御に影響を与えることができる。ここでの重要な要因は、何の役が演じられ、さまざまな役の間にどのような人間関係が存在するかである。プレイワールドのナラティブ環境は子どもに意味を形成し、われわれが“ナラティブ・ラーニング”と呼ぶ特別なタイプの学習を促進する。
“ナラティブ・ラーニング”は、
1. 事実や知識にではなく、意味(sense)と語義(meaning)に向けられている。
2. 自分自身の心理プロセス(たとえば不安、記憶、思考、意志など)を練りあげる“心理学的道具”をもたらす。
3. 知識やスキルというよりもむしろ、心理的な潜在能力やレディネスをつくる。(たとえば、豊かな想像的遊びが成人期の流暢な思考につながる)
 当日は1996年以来のプレイワールド・プロジェクトで得られた実験的研究を報告する予定である。


●講演者 Milda Bredikyte, フィンランド,オウル大学カヤーニ校
テーマ:成熟した遊びを育てるー遊び,創造的ドラマ,アート

報告スライド(←クリックすると閲覧可能)


講演要旨:

 遊びは幼児期の発達を促すものであるばかりでなく、幼児期の学習のふさわしい形でもある。学業的知識や技能の獲得に遊びが積極的な役割を果たすとする証拠が増えている。ヴィゴツキー(1977)は発達的観点から見て、遊びは学校学習よりもより効果的に要求や意識の変化をもたらすものだと主張した。エリコニン(2005)は遊びを一般的な学習の潜在能力の発達の源泉であると考えた。彼は成熟した想像的遊びには次のような効果があると考えた。すなわち、(1)動機の発達、(2)他者の視点の理解、(3)想像力の発達、(4)意志と自己制御の発達である。ここで重要なのは、これらの効果が子どもの発達における遊びの成熟形態の結果としてもたらされるという点である。
 最近の研究によれば、学齢期前に遊びが十分発達しない子どもが増えている。16か国の国際的レビュー(Singer&Singer,2008)もまた、子どもの想像的遊びが消失し、それがしばしばメディア使用(ゲーム、テレビ番組、DVD)に置き換えられていることを示している。したがって、大人の役割は遊びの成熟形態の発達を支える教育的環境をつくり出すことにある。教師は子ども間で現在進行中の遊びの展開を手助けするだけでなく、遊びを起こす−−すなわち幼児のコミュニティーの中に遊びのより高次の形態を‘提案’したり、見本を示す−−必要がある。そのため、教師には以前よりも深い知識と洗練された遊びのスキルが求められることになる。
 われわれの調査保育サイトである“シルム”では、学生は子どものより複雑な遊び形態の発達を支援する効果的方法を学んでいる。共同遊びは創造的ドラマメソッドやストーリーテリングを通して展開し、しばしば描画や絵画活動へとつながっていく。


●ディスカッサント 泉千勢, 佛教大学  「保育学の立場から」

●ディスカッサント 加用文夫, 京都教育大学 「発達心理学の立場から」

●通訳 高橋睦子, 吉備国際大学 , 丸山慎, 東大・国立情報学研究所

●司会 石黒広昭 立教大学

*本シンポジウムは立教大学国際センター招聘研究員制度と科学研究費補助金( 基盤研究(B)) 「社会的に排除された若者の自立支援における社会関係資本形成の意義に関する実証的研究」(代表:宮崎隆志)の助成を受けています。

協賛:(財)全日本私立幼稚園幼児教育研究機構

特に申込みは必要ありません。直接会場へお越し下さい。(参加無料)


問い合わせ:kodomoproject@grp.rikkyo.ne.jp

以上